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業 務案内 ア メリカ(米国)個人所得税・2021年想定Q&A プロフィール コンタクト ホー ム


パート I:外国人に対する米国での課税 パートII:税務申告書の仕組み
アメリカ(米国) 個人所得税・2021年想定Q&A
(表1)2021年 米国居住者・非居住者の判定フローチャート
  (資料元:2012年版IRS刊行物 519)


貴方は2021年の間に、米国永住権所有者
(グリーンカード所有者)だったことがありますか?


貴方は2021年の間に少なくとも31日は
米国に滞在しましたか?

貴方の2021年の米国滞在日数、2020年の米国滞在日数の1/3、
2019年の米国滞在日数の1/6、の合計が、
少なくとも183日ありましたか?(注3)

貴方は2021年の米国滞在日数が
少なくとも183日ありましたか?

貴方は2021年において米国以外の国に
タックスホーム(tax home)**を持ち、
その国との結びつき(close connection)の方が
米国との結びつきよりも強かったですか?

注1:もし当年が赴任、あるいは帰国の年である場合、貴方は二重身分かも知れませ ん。
注2:米国と貴方の本国の間での租税条約によっては、貴方は「非」居住者かも知れません.
注3:疾病などの理由で米国から出国が不可能になってしまった日数は、計算に入れない場合もあります。
注4:もし2020年は「長期滞在テスト」に合格しなくても、2021年には同テストに合格するならば、2020年の一 部分を米国「居住者」扱いとすることが出来ます。
*当方の追記*F、J、MあるいはQのビザで米国滞在の外国人留学生・研修生(foreign student or trainee)は、所得がなくても別表8843を添付した「非居住者」申告書1040NRの提出が義務づけられていま す。
**当方の追記*サラリーマンの場合、タックスホームは一般に勤務先の場所を指します。
そして、フローチャートの中程にありますように、永住権所有者ではない外国人で当年度の米国滞在が31日以上の人につい ては、当年度の滞米日数+前年度滞米日数 x 1/3+前々年度滞米日数 x 1/6で算出した合計日数が183日以上であればその個人は米国居住者であるとしています。


単純な計算式による判定で、これは183日テストと呼ばれています。

但し、これにも例外があり、

(1)F、J、M、Qなどのビザで滞在していた学生、研修生
(2)A,Gなどのビザで滞在していた外交官(diplomat)
       外国政府関連職員(foreign government-related individuals)
(3)米国外に税務居住地を持ち米国以外の国との結びつきの方が米国との結びつきよりも強い個人

については、たとえ183日テストに合格していても米国非居住者として扱われる場合があります。

さて、Q氏のように赴任年度についての判断ですが、例外には該当しない場合、赴任の時期により次のどちらかになります。

(a)赴任後は米国居住者、赴任前は米国非居住者、という当年度の間に二つの身分を持つ「二重身分」の外国人(a dual status alien)。

例えば、4月1日に初めて米国へ赴任した人は、年度末には183日テストに合格しているため、4月1日から12月31日迄の 期間は居住者となり、それ以前の1月1日から3月31日迄の期間は非居住者となります。

(b)赴任年度は年間を通して米国「非居住者」という一本の身分(a nonresident alien throughout the entire year)。

例えば8月1日に初めて赴任した人は、年度末には183日テストに合格していないため、1月1日から12月31日迄の年間を 通して非居住者となります。


 そうすると31日 に赴任した私は二重身分となり、111日 に赴任した上司は非居住者という身分になる 訳ですか?


 はい、原則としてはそうなります。

でもこれにも例外があり、(a)の「二重身分」の既婚者には、1月1日から12月31日迄の「一年間」を通して「米国居住 者」と見なし、「夫婦合算申告」(married joint filing)する、つまり夫婦の一年間の全世界所得を合算して一つの申告書として報告する「選択」(IRC (Internal Revenue Code) Section 6013(h) or IRC Section 6013(g) election)があります。

年の始めに夫婦が共に米国非居住者であったのが、年の末には夫婦が共に米国居住者である場合は、h選択となります。 ところが、年の末に一方が米国居住者になったのに、他方が米国非居住者である場合は、g選択となります。

ですから、いわゆる「単身赴任」の方は、後者のg選択に該当することになります。

一方、(b)の「通年非居住者」については、「初年度選択」(First Year Election)と呼ばれている選択(IRC Section 7701(b)(4) Election)があります。

これは、当年度少なくとも連続して31日以上米国に滞在し、その滞在日数が連続滞在期間の初日から年末迄の日数の75%以上 であれば、翌年に183日テストに合格するのを待って、滞在初年度を「二重身分」の年度とする選択です。

但し、申告書提出は、翌年に183日テストに合格する日以降でなければなりません。 ですから、その日が4月15日(あるいは別の日)以降の場合は正式には提出の延長願いが必要となります。

 となると、私については原則は「二重身分」、選択 すれば「通年居住者として夫婦合算申告」が可能となり、上司については原則は「年間非居住者」、選択すれば「二重身分」が可 能ということになる訳ですね。

選択をするのは有利な場合だけすれば良いのですか?

 呑み込みがお早いですね。会計士に向いています よ。イヤイヤ、冗談です。 おっしゃる通り、有利な場合だけ選択すれば良いのです。

まず違いについて、それから次にどういう場合に選択すべきか、ご説明します。

まず(a)の「二重身分」の場合、「赴任後の全世界所得」の報告をする居住者申告書を「主」とし、「赴任前の米国源泉所得」 の報告をする非居住者申告書を「従」として添付する連邦税務申告書を提出します。赴任前に米国の所得がなければ赴任前につい ては米国の税金は生じません。

赴任後は全世界の所得を報告させられますが、この二重身分では既婚者であっても夫婦合算申告が許されず、「夫婦個別申告」 (married filing separate)が義務づけられています。

駐在員の場合、奥さんには所得がない場合がほとんどですから、たいていはご主人の申告書一本の提出となります。

この場合、駐在員のご主人が提出する申告書は、夫婦合算に比べ実効税率が高い夫婦個別である上、「標準控除」 (standard deduction)が許されず「個別控除」(itemized deductions)のみしか控除ができません。控除などについては、また後でご説明させて頂きます。 一方、二重身分でありながら通年居住者として扱う選択をすると、夫婦個別に比べ実効税率が低い夫婦合算の居住者申告ができま す。 しかし、その代わりに赴任前の全世界所得も加えて報告しなければなりません。つまり日本など米国外での所得を入れることになります。

しかし、何といってもこの際メリットが大きいのは、夫婦合算で申告できるということです。

赴任前の日本の所得を含めるのは一見デメリットのように思えますが、日本で所得税が支払われていれば、それを外国税額控除 (クレジット)として米国の連邦税を減額させるのに利用することができますし、赴任が年の初めに近ければ近い程、「選択によ る夫婦合算申告」の方が「原則の夫婦個別申告」よりも節税になる場合が出てきます。

4月位迄の赴任なら、選択して年間居住者扱いする方が節税になるというのが最近の一般的傾向です。

さて次に、(b)の年間を通しての「非居住者」の場合、赴任者は年間を通して米国を源泉とする所得だけを報告する、つまりほ とんどの赴任者にとっては赴任後の米国での所得を報告するだけで済む、というメリットがあります。

しかし、非居住者の申告書には既婚者に対して夫婦合算申告の選択が与えられず、実行税率が高い夫婦個別でしか申告ができない ので、割高の税金を払わされるというデメリットがあります。

また配偶者と扶養家族の人的控除も、日本人の 場合2004年までは年間の本人の全世界所得に対する米国源泉所得の比率割合を掛けた金額まで控除できまし たが、日米租税条約 の改定により2005年から2017年 にかけてはそれも取れなくなり、基本的に本人の分しか人的控除(こ れは100%)だけとなっていました。し かも、新税法TCJAにより、2018年以降は人的控除そのものが撤廃 されてしまいました。


ですから、税率だけでいえば年間を通して非居住者とする場合と同じになります。

どちらが有利かを決めるには、

(1)12月の日本での賞与の支給
(2)居住者申告書なら損失として計上できるが非居住者申告書では計上できない項目
(3)居住者申告書なら控除できるが非居住者申告書では控除できない項目
この3点の検討が必要になります。

例えば、11月1日に赴任された上司の方に4月から9月の期間を対象とする冬季賞与が日本で12月に支払われたとします。 この場合、この冬季賞与は全額が赴任前の日本での勤労に伴う日本源泉の所得ですから米国所得ではないので、非居住者との立場 を取ると所 得として報告する必要がないのに、居住者との立場を取ると米国所得ではないにも関わらず全額を所得として報告する必要があります。

しかし、もし上司の方に赴任後多額の自己負担医療費や利息支払いがあったとしたら、これは居住者との立場を取ると個別控除と して計上 できますが、非居住者との立場を取ると計上できません。

それでも、恐らく賞与の額の方がこういう控除として計上できる額を大きく上回っていると思われますので、年の終わり近くの赴 任 の方については、やはり一般的には冬季賞与の全額あるいはその大部分の額を所得として計上しなくても済む年間を通しての非居 住者の立場の方が有利といえます。

 なんだかややこしいですね。会計士さんに申告書の 作成を頼むつもりでいますが、その辺は大丈夫ですかね?

 外国人の税務申告に経験のある会計士なら当然どの 選択が有利かを考えてくれる筈ですが、気になれば頼まれる時にその点を訊ねられたらどうでしょうか?

 そうしてみます。

さて私はこれから暫くの間駐在していると思いますが、今年以降の年、帰国の年はどうなるのでしょうか?

A氏 赴任年度に続いて翌年以降の駐在されている期間は、恐らく183日テストに毎年合格するので、「通年居住者」となりま す。 この場合、くどくなりますが米国市民と同じく「全世界所得」を毎年報告する代わりに米国市民と同じ基準で各種控除が得られます。

帰国年度ですが、1月中に帰国すると帰国年は「年間を通して非居住者」となり、2月以降に帰国すると1月1日から帰国日迄は 「居住者」であり帰国日の翌日から12月31日迄は「非居住者」であるという「二重身分」となります。

この場合の税務は、前にご説明した赴任年度の二重身分とは「逆」になります。 (つまり、1月1日から帰国日までは「居住者」、それ以降は「非居住者」。)

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