アメリカ(米国)
個人所得税・
2021年想定Q&A
IRAへの拠出が今から駆け込みで出来る節税策
IRAは、
どういうものでしょうか?
IRAとは Individual
Retirement Accountの頭文字による略称で、個人退職年金口座を指します。
勤労所得の一部をIRAとして預金すれば、その所得は引き出されるまで課税が延ばされるという税の優遇措置です。
2021年ほもう終わってますが、2021年のためのIRAの積立ては2022年4月18日(2021年の申告期限日)まで許されていますから、今
から 駆込みで間に合う節税策といえます。
勤労所得か6千
ドル(2021年末に50歳以上なら7千 ドル)のどちらか少ない額迄を所得調整と
して使えます。 1997年からは、夫婦合算申告をするものの配偶
者に勤労所得がない場合でも、配 偶者は積立てを所得調整として使うことがで
きるようになっています。行動としては今から4月18日迄の間に銀行や証券会社などの金 融機関へ行って「2021年
のIRA」 を開きたいといって積立てするだけで済みます。
その仕組みについて もう少し説明して頂けますか?
これは勤労所得の一部をIRAに充てると、その充
てた分の所得とその後充てた拠出金が生み出す利子・配当金所得などは引出す迄は課税を延ばしてくれるという税繰り延べの措置
なのです。アメリカのIRAをお手本にし、日本でも「個人型確定拠出年金」制度が数年前からありますよね。
但し、59.5歳になる以前、あるいは身体障害者になる以前に引出してしまうと、例外を除き、引出した額に課税されるばかり
か早期引出しとして引出し額に対し10%の罰金が課されてしまいます。
会社に年金プランがなく、長くこの国に居るつもりの方の場合、IRAは一般的にはお勧めです。
米国市民あるいは永住権所有者ではない駐在員の方は、日本に帰国してしまうと、その後は米国での勤労所得がなくなってしまう
ので拠出は続けられませんが、帰国時に引出さないで、そのまま59.5歳以降になるまで置いておくことも考えられます。
置いてある間は拠出金が生み出す利子・配当金所得は非課税でそのまま膨らんでゆき、引出した時点で米国非居住者として、引出
した金額に対する税を支払うことになります。帰国時に米国居住者から非居住者へと身分が変更しますので、拠出先の金融機関に
非居住者になる旨の用紙W−8BENを提出すべきです。
但し、日本へ帰国し米国非居住者となってからIRAを引き出すと米国だけでなく日本でも課税対象となってしまいます。勿論、米国での税が発生す
ればそれを外国税額控除として日本で発生する税を削減するのに使うことが出来ますが、日本への帰国前の米国居住者で
ある間にIRA全額を引き出しておけば日本での課税そのものを避け
ることが出来ます。
拠出の所得に対する税繰り延べが許されない場合で
もIRAへの拠出ができますか?
これもグッドクェスチョンですね。
税
の繰延べを伴わない、つまり節税を伴わずにIRAに拠出することは可能です。この場合でも拠出以降に生み出す利子・配当金所
得については引出すまで非課税です。
現在この拠出金相当の所得に対し課税されるIRAは2種類あります。
ひとつは、従来のIRA(traditional
IRA)でこれは72歳(2019
年以前に70.5歳に既に達している
人は70.5歳)以
降は引出しが強制されます。
もうひとつは、ロスIRA(Roth
IRA)と呼ばれるIRAで、提
唱者の故ロス元上院議 員の名前を取ったものですが、これには72歳(または70.5歳)以降の強制引出しの義務がありませんし、ロスIRAへ
の拠出から5年以上経過している適格引出しであれば引出した額
に対 する課税は免除されます。
2021年については、従来のIRAへ
の拠出と同じくMAGI(調整AGI)の金額により拠出可能な上限額が決まりますが、当年非課税のIRA拠出と同じく、最高6千ドル(50歳以上なら7千ドル)の上限があります。
ロスIRAは、遺産税の観点からも大変に魅力のある自己積立年金となっています。
課税されていない従来のIRAからロスIRAへの移管(rollover)ですが、2010年以前はAGIが$10万以下の
場合のみ可能という制限があったのでですが、今はその制限はありません。移管は可能ですが、移管した金額は原則としてその移管をした年での課税対象となります。
これも拠出期限はIRAと同じく4月18日までで、拠出金は控除とはなりませんが、それが生み出した利子・配当金所得は引出
すまで課税されませんし、引出した時点で引出し金が大学以上の教育に使われていれば非課税です。
それから、これもIRAではありませんが、以前の「医療預金口座」(Medical Savings Account,
MSA)に代わるものとして「健康預金口座」(Health Savings Account,
HSA)があります。この口座が生み出す利子・配当金などの所得ですが、IRAと同じく非課税となっています。
この口座へは雇用者から拠出するのが建前ですが、自分からも拠出した場合その拠出部分については所得調整項目として控除でき
ることになっています。
これも拠出期限はIRAと同じく4月18日
までで、自己だけをカバーする8HDHP(high-deductible health plan日で、高額自己負担健康プラン)な らば、2021年については、最高3,600ドル、家族をカバー
するならば最高7,200ド
ル、まで拠出できます。(2021年末に50歳以上なら1千 ドル追加)
たくさんのIRAがあるんですね。
チョイスが増えていますが、複雑ですね。
さて、軍人の転勤費用控除というのがありますが、
軍人以外の人が自己負担した転勤費用はどうなっていますか?
2017年
までは自己負担の転勤費用は所得調整項 目として控除が認められていましたが、税
法改定により軍人以外はパッサリと撤廃されてしまいました。
会社が負担
してくれた転勤費用はどうなりますか?
転勤に伴う旅費、運送費などの会社負担払いにつ いては、2017年までは原則的に本人の所得としてあげる必要はありませんで
したが、これも税法改定により2018年以降は本人の所得としてあげること
が必要になりました。大抵の場合は雇用者から受取る給与源泉徴収票W-2のBox
1 Wages, tips, other compensationに表示され
る給与等の総額に既に含まれている筈です。
以上ここでご説明したのは所得調整の項目でして、基本的に総所得から差引く、つまり総所得を減
額し節税に貢献してくれる項目です。2020年の申告からはこれに、もう一項目が
加わりました。後でご説明しますが、「個別控除」の合計額が「標準控除」以下であったために結局は個
別控除ではなく標準控除を選択することになった場合に、個別控除に含まれていた「寄付金」を最高$300まで所得調整として計上することが出来るようになりました。
「税計算の流れ」に「標準控除か個別控除かどちらか大
きい方」とありますが、これが関係するんですね?
はい、その通りです。連邦政府は各納税者に対し、何もなくても引ける最低の概算経費として
「標準控除」を与えてくれていて、実際に引ける経費である「個別控除」と比べてどちらか多い方をAGIから控
除出来る仕組みになっています。税法改定により「標準控除」の金額が大きく増額されたので、2017年までは「 個別控除」が標準控除を上廻っていたのに2018年
以降には「標準控除」が「個別控除」を上廻る、と逆転となる納税者が多く出て来ました。
2021年の標準控除は、独身者に12,550ド ル(2020年は12,400ド ル)、夫婦合算申告者・寡婦(夫)に 25,100ドル(2020年は24,800ドル)、独身世帯主に18,800ドル(2020年は18,800ドル)、夫婦個別申告者に12,550ドル(2020年は12,400ドル)、となっています。「65歳以上」あるい
は「盲人」である場合 は 標準控除は更に増額(夫婦合算申告
者・寡婦(夫)及
び夫婦個別申告者に1,350ドル(2020年は1,300ドル)、独身者及び独身世帯主に1,700ドル(2020年は1,650ドル)、を加算)されます。
他方、「個別控除」としては表3にある該当要素を合計して計算しますが、これはスケジュールA(Schedule
A)という別表に記載し、Form 1040に
添付することになります。
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