星野会計事務所
税務ニュースレター
No. 18-1 January 24, 2018



税削減及び雇用法の要点 Highlight of Tax Cuts and Jobs Act

「税削減及び雇用法」 Tax Cuts and Jobs Act は米国下院(賛成224対反対201)と上院(賛成51対反対48)を通過した後、2017年12月22日にトランプ大統領が署名したことにより正式な法律(2025年12月31日まで実効)となった。その殆どの条項は2018年から実効となるので、2017年の税務に対する影響は少ない筈である。以下はその骨子の要点である。

個人所得税関連

(1)税率 Tax Rates(2025年まで)

最高連邦税率が2017年の39.6%から37%へと低減され、累進税率も「10%、15%、25%、28%、33%、35%、39.6%」から2018年以降は「10%、12%、22%、24%、32%、35%、37%」へと全体として低減した。同時に、各税率対応の課税所得範囲は全体として拡大された。

(2)人的控除 Personal Exemption

人的控除は撤廃され、2017年の一人あたり$4,050から、2018年以降は$0へとなった。

(3)標準控除 Standard Deduction

標準控除については、夫婦合算申告者で2017年の$12,700から2018年の$24,000へと増加、独身者及び夫婦個別申告者で2017年の$6,350から2018年の$12,000へと増加、独身世帯主申告者で2017年の$9,350から2018年の$18,000へと増加、した。2019年以降はインフレ調整による増額がある。

(4)項目別控除 Itemized Deduction

2017年までの標準控除か項目別控除かどちらか多額を控除する選択はそのまま維持され、2017年での合計額の上限計算(通称Pease制限)は2018年以降に廃棄となった。従来の項目別控除に含まれていた以下の各項目に改定があった。

(A)医療費 Medial expense

2016年まで医療費の合計額は調整後総所得「AGI」の10%を超過した金額しか控除とすることができなかったが、2017年と2018年については7.5%へと減少となった。これは後述する健康保険ACA法個人共有責任ペナルティーが2017年及び2018年に有効であるため、その影響を緩和させるためであり、2019年以降は元の10%に戻ることになる。

(B)州市その他地方税、売上税及び不動産税の控除 State, local, sales and property deduction

2018年以降は控除できる税金合計額の上限が$1万(夫婦個別申告者は$5千)、に設定された。ニューヨーク州、カリフォルニア州など州市所得税と不動産税(学校税を含む)が高額な地域に居住する納税者にとっては増税の要素になる。

(C)モーゲッジ利息の控除 Mortgage interest deduction;ホームエクィティーローンへの利息の控除 Home equity loan interest deduction

新規住宅購入、2件目住宅購入に伴う支払い利息の控除については、その元となる借入金の(2件目も含めた)合計残高上限が2017年までの$1百万(夫婦個別申告者は$50万)から2018年以降は$75万(夫婦個別申告者は$37万5千)に削減された。但し、2017年12月15日までに契約あるいはリファイナンスした借入金については上限の$1百万(夫婦個別申告者は$50万)が維持される。

更に、住宅価値上昇を担保とするホームエクィティーローンへの支払い利息については、2017年までは元となる借入金10万(夫婦個別申告者は$5万)まで認められていたが2018年以降は撤廃となった。

(D)寄付金 Charitable contributions

2017年まではAGIの50%までの金額が控除可能であったが、2018年以降はAGIの60%までの増加となった。

(E)災害・盗難損失 Casualty and theft losses

2017年まで一件ごとに$100を超過する損失の金額を控除できたが、大統領が認定した災害以外は2018年以降に撤廃となった。

(F)雑控除 Miscellaneous deductions

自己負担ビジネス経費 unreimbursed business expense、申告書作成費用 tax preparation fees、投資経費、銀行セーフデポジット箱 investment, safe deposit box, etc.、などのAGIの2%の制限計算対象となる費用については全て2018年以降は撤廃となった。

(5)項目別控除の計算ではなく調整後総所得の計算に含まれる控除 Expense or loss for arriving at AGI, not for itemized deduction

(A)転勤費用 Moving expenses

2017年までは転勤費用を適格であれば控除することができたが、軍関係の転勤費用を除き2018年以降は撤廃となった。

(B)離婚手当 Alimony

2017年までは離婚手当支払いを控除とすることができた(その代わり元配偶者はその申告書で受取り離婚手当を所得として申告)が、2018年以降は撤廃となった。これにより受取りの元配偶者は所得として申告する必要がなくなった。実際には、この撤廃は2018年12月31日以降に実効となる離婚・別離契約を元とする手当が対象となる。

(C)国内生産活動控除 Domestic production activities deduction

米国製品の輸出を支援する控除であるが、2017年までは控除とすることができたが、2018年以降は撤廃となった。

(6)健康保険ACA法個人共有責任ペナルティー ACA individual shared responsibility penalty

現行では申告書に記載の納税者及び扶養家族で1年間の内3か月以上の無保険期間がある場合は、無保険に対するペナルティーが課されているが、このペナルティーが2019年からは撤廃となった。

(7)児童税額クレジット Child tax credit

2017年までは「適格の児童qualifying children」(扶養されている17歳以下の子供)については1人当たり最高$1千の税額クレジットを計上することができたが、2018年以降は最高$2千に増額された。適格であるためには児童がソーシャルセキュリティー番号を保有していることが前提となるため、その児童が個人納税番号ITINしか所有していない場合、税額クレジットは$5百となる。また、適格の児童ではなく「適格の扶養家族qualifying dependents」の場合も、$5百の税額クレジットが与えられる。クレジットはAGIが$40万(夫婦合算者)、あるいは$20万(夫婦合算者以外)を超過すると削減され始める。

(8)代替ミニマム税AMT Alternative minimum tax

個人のAMTは継続されるが、一律控除額は増加された:夫婦合算者は2017年までの$84,500から2018年以降は$109,400へ、その他は2017年までの$54,300から2018年以降は$70,300へと増額。一律控除額はその後インフレ調整される。

(9)パススルーのビジネス所得 Pass-through business income

2017年まではパートナーシップ、S法人への出資者及個人自営業者については、その自己相当分の所得(パススルーの利益)に対して最高39.6%の税率で課税されるが、法人税の最高税率が2018年から21%に軽減されることに対応し、2018年以降はパススルーの所得の内20%まで控除することができることとなった。

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以下、法人所得税関連の改定についての説明は後ほど追記アップロードの予定